2021年4月3日土曜日

京都ぎらい 井上章一 朝日新書

 2020年5月3日

西宮から名神高速で諏訪に帰るときはたいてい京滋バイパスで京都をはぶくし、新幹線で行き来するときも「国鉄が京都に寄るから遠回りなんや」とぶつぶつ言う。そして枝雀さんや米朝さんの「京の茶漬け」を聞いてうひゃうひゃ笑っている我が輩に、関東人の内儀は「ひょっとして京都が嫌いなの?」と問う。そういうときは「京都はややこしいんや」としか言いようがない。

その京都のややこしさを、嵯峨野=洛外で生まれ育った著者が恨みを込めつつ書いているのがこの本。

著者はもう一歩踏み込んで、京都の寺の土地が9割がた新政府に接収された明治維新が革命だったこと、江戸城こそ無血開城されたけれど、京や会津では血なまぐさい戦闘が行われたこと、そしてその流れが大東亜戦争まで続いたと考察する。さらに、京都人が天皇に戻ってきてほしくなどないこと、東京のメディアと京都が共依存関係にあることなども言及する。本筋から離れたそのあたりがおもしろい。

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