2021年4月4日日曜日

聖書の世界といえば

 2020年11月5日

大学を出て就職して2年めにバグダッドに行かされた。親会社の商社がサダム・フセインにディーゼル発電機を250台くらい売ったので、その運搬設置チームにわしが派遣されたのだ。ディーゼル発電機といっても海上コンテナくらいのサイズなので、クレーンで吊りあげなければならない。クレーンのオペーレーターはアビジェードというでぶだった。

その朝、いつものようにヤードの入り口の掘っ立て小屋でチャイをしばきながらメンバーが揃うのを待っていた。でぶのアビジェードがおでこにでっかい絆創膏を貼っていたので、なんでやねん?どないしてん?という話になった。

「きのうロバに乗っかろうとしたら蹴られて5フィートほど吹っ飛んだんや」

一同大爆笑。

「なんでロバやねん?」

「ふつう羊やろ」

「5ディナール出したら男の子のケツ借りられるやんけー」

わしは思わず言ったもんだ。

「ふつうは羊なんか?」

みんな笑うのをやめて、まじめな顔をしてわしに聞くのだ。

「羊やなかったら、日本人はなにに乗っかるねん?」

わしは聞きかじりの知識でこういった。

「いなかではニワトリらしいで」

みなふたたび大爆笑。涙を流してるやつもおった。

「日本人は抜くたびにニワトリ潰すんか?」

1983年、アート・ペッパーが死んだ年のことだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿