タイトルに惹かれてブッコフで注文したら、新品がディスカウントでやってきた。金原先生も70歳になるので、取り置き在庫を放出したのかな。
内容は、ブックオタクそのもの。金原先生の名前も知らなかったし、本に出てくる人の名前も、レイ・ブラッドベリ以外は知らない。 そのレイ・ブラッドベリも、我輩はまともに読んだことがない。
本をたくさん読むのはいいことだ。
通訳をしていると、神の瞬間がある。神の瞬間は、通訳なら、たぶん誰にでもある。神の瞬間とは、つぎに誰が何を言うかわかるし、話がどういうふうに展開するか読める。そしてセッションが、だいたいその通りに終わる。つぎに誰が何を言うか読めるので、こんな楽な通訳はない。
言語を超えて、人間の文脈は共通している。本をたくさん読んでいると、人間のつむぐストーリーに共通した文脈みたいなんもが、なんとなく入ってくる。神の瞬間というのは、そういうことであって、不思議でもなんでもない。
その文脈をとんでもなく裏切ってくれるのが、「やし酒飲み」みたいなアフリカのストーリーだ。ぶっとんでいるからこそ、やし酒飲みが評価される。本をたくさん読んだ人の考える文脈、ふつうの人間が考えるストーリー展開からおおいにはずれているところが、すばらしい所以だ。
「翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった」というタイトルにひっかけられたが、その謎は本文の2ページめでタネあかしされる。はやすぎる。タネあかしというより、そのまんまだ。でもこの本には、それ以外にキャッチーな内容があんまりない。この本を売ろうと考える編集者なら、その題にするに違いない。
前述のように金原先生はもう70歳を超えている。この本は過去30年くらいにあちこちで書かれたものが集められているので、本の中で先生は50歳くらいだったりする。ヤングアダルトノベラーにはいい本かもしれない。
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