2023年2月12日日曜日

愛と情熱の日本酒 山同敦子 ダイヤモンド社

 手にとって「なんじゃいな?」と思った。表紙の裏に著者のサインがあり、それなのにブッコフの110円コーナーだ。諏訪の地酒は2銘柄しか載ってないし、あんまり期待しないで読んだ。

そしたら、けっこう面白かった。著者はご自分でもいうように、酒つくりの経験があるわけでもない。でもめっちゃ酒が飲めて、ご自分でも料理を作る。ワインへの造詣もあるようで、食中酒としての日本酒を「こんな料理といい」てな具合に描写する。

我輩は体質のせいで、日本酒は正月以外飲まないことにしている。でもこの本を読むと、毎日でも飲みたくなる。

知ってはいけない現代史の正体 馬渕睦夫

 同じ著者の「世界を繰るグローバリズムの洗脳を解く」というのも併せて、面白かったので一気読み。著者は外交官で、元駐ウクライナ大使閣下だった人。こんな勉強熱心な人が大使だったら、当時の大使館はさぞかし面白かっただろうなあ。

「世界を繰る」のほうが新しいらしく、ロシアによるウクライナでの特殊作戦がはじまったあたりのタイミングだろうか。この種の本が3万部売れたというのだから、日本人も捨てたもんじゃない。

カール・マルクスについては我輩が学生のころ和訳されたエルンスト・ブロッホの「希望の原理」で、マルクスが資本論で論じたユートピア的な理想社会が、ユダヤ教の影響を濃厚に受けているというような記述があるらしい。実家に寝かせたままなので、こんど読んでみよう。

それはともかく、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティーも、カール・シュワブの世界経済フォーラム(いわゆるダボス会議)も、カール・マルクスも、レーニンも、トロツキーも、ユダヤ教の影響から派生したという線で結ばれる、というのは長年の疑問が解けたということで、ずいぶんスッキリした。

いや、ユダヤ教の影響というよりも、ユダヤ教徒であったがために常に欧州のどこかで暴力的迫害に晒され、土地を所有できず、共同体の隙間で生きている人たちとして、国家意識がなかったということだ。

ここから本書を離れて、我輩が最近考えている事になる。それは、ユダヤ人問題はヨーロッパ問題だということ。考えてみれば、ユダヤ人を迫害してきたのはヨーロッパ人である。昨今の情勢、すなわち西欧の指導者たちがすすんでEUの枠組みを破壊し、欧州の経済基盤を投げうち、官民ともに勝てるわけのないウクライナに全財産を賭けるようなことをしているのは、ユダヤ人による弔い合戦じゃないのか。自分の国から遠いところの戦争で、死ぬのはウクライナ人とロシア人、ふふん、と高みの見物をしているアメリカもじつは危ない。ユダヤ系は国家意識がないから。

迫害されてきたユダヤ人が、イスラエルを建国したとたんパレスチナ人を迫害するようになった。不思議だと思っていたが、ディアスポラでつねに暴力に晒されてきたユダヤ人ゆえ、暴力への耐性、というより鈍感さは、国家意識のなさと同じくらい根深いものがあると我輩は思う。

欧州は秦の始皇帝がいなかった中国である、というのも我輩の考えである。中国では始皇帝がローカル性にこだわる人たち、ちょっとした差異にこだわる人たちを生きたまま穴に埋め、ローカルな文字や書体を記載した本を燃やしたので、中華という共通アイデンティティーが確立された。欧州では始皇帝がいなかったので、皆それぞれローカルな伝統にこだわり、ちょっとした差異をより際立たせた。そのローカルたちのせめぎ合いが競争心をうみ、それが科学技術の発展を促した。しかしちょっと油断したら隣人にプスリと刺されてしまうという環境で、みんなでユダヤ人をいじめて辛うじて均衡を保ってきたのが欧州の歴史だと思う。ユダヤ人がイスラエルを建国してしまったので、いじめる対象がなくなった。虐める対象がいなくなったら、さっそく内輪揉めだ。さもなくば、新しい対象を探すしかない。そうだ、ロシア人だ。ほぼロシア人であるウクライナ人を使って、ロシアと喧嘩させよう。それを支援しよう。隣人に刺されるより、アメリカの誘いに乗ってロシア人をいじめたほうがええんじゃないか、と。

さて本書に戻る。馬渕さんは日本人の特質として神道と祖先崇拝を挙げている。これはちょっと違うんじゃないか。諏訪のあたりの御柱祭を観察して感じるのは、カリマンタン・ボルネオの先住民にいまだに濃厚なアニミズム、要するに森林に棲む祖先の聖霊崇拝に共通するものだ。また甲斐国あたりの神社の古い石碑などを観察して感じるのは、仏教が伝来するまでぜんぜん体系化されることのなかった神道の祖先崇拝の形だ。古い石碑などを見ると、仏教に対抗するため神道が(おそらく本居宣長くらいの新しい時代に)拙速に体系化しようとした痕跡である。筆者が主張するように、仏教が祖先崇拝を認めたのでローカライズしたのではない。神道は明治時代に国家宗教として拙速に体系化されるまで、それぞれの地域のバラバラのアニミズムだったにすぎない。それが日本人の宗教観だ。

もうひとつ、馬渕さんはこれをどうお考えかな?と尋ねたい課題があったのだが、失念した。思い出したら記述するぞ。


耳鼻削ぎの日本史 清水克之 洋泉社歴史新書

 前に本ブログに書いた、同じ著者による「室町は今日もハードボイルド」がたいそう面白かった。

https://tamapiri.blogspot.com/2022/08/blog-post.html

おなじように面白いのを期待したら、たいそうエグい話に始まり、エグい話で終わった。筆者としては同じスタンスなのだろうが、高野秀行さんみたいな人との対談形式なんかで、適度に薄められたほうが読みやすいのかもしれない。

ではなんでそんなエグい話を読み進めたかというと、何箇所か紹介されていた「耳塚・鼻塚」のうち二ヶ所が近所にあったからだ。

塩尻市大門三番町の耳塚

松本市寿豊丘の耳塚

さらに、Googleマップ様では、塩尻市北小野2704という住所にも耳塚があるとな。ちなみに本書では、前述2箇所は1548年の桔梗が原合戦の戦死者を祀ったものとされているが、考古学的に調査されたことがなく、近在住民にとっては耳が良くなるという土俗信仰の対象であると紹介されている。

しかし、我輩は思う。もし日本が近代化されず、長野県や岐阜県に道路や鉄道が通じず、山々を穿つトンネルがなく、山間の共同体がそれぞれ隔絶されたままだったら、今のアフガンみたいにタリバン的な男たちが跋扈して、耳削ぎ鼻削ぎが普通に行われていたに違いない。本書にはアフガニスタンの鼻削ぎも紹介されていて、それはちょっと違う文脈じゃないか的な記述だ。我輩は、まったく同じ文脈だと思う。


2022年10月8日土曜日

ロシア語だけの青春 ミールに通った日々 黒田龍之介

【引用】

講演会で外国語学習について話していたとき、こんな質問が出た。

「ひたすら発音して、暗唱してという、ミールの方法をどう思いますか」

答えは決まっていた。

わたしはそれ以外に知らない。


本当に、知らないのである。

+++++

この本の最後の部分である。

深く、深く感動した。

2022年10月2日日曜日

京都、パリ この美しくもイケズな街 プレジデント社

「京都嫌い」の井上章一さんと鹿島茂先生の対談。おもしろかったので洗濯物を乾燥したりごろ寝しながら1日で読了。

得られたものは、ルイ16世の弟がゲイだったとか、国家とか都市が凋落しはじめたとき観光地化するとか、フランスの高速道路のSAみたいなところの大衆向け食堂のメシは激マズだとか、料理史家は「イタリアからやってきた料理人がルイ14世にから休暇をもらってイタリアに帰った時点」がフランス料理の成立としているとか、丸紅も伊藤忠も応仁の乱のあと荒廃した中京に移住した近江商人であるとか、あれこれたくさんの無駄な蘊蓄。

「無駄」というのはなんでかというと、我が輩はすでにジジイと呼ばれる領域に達していて、ジジイがもっとも避けるべきは、若手が聞いてもしょうがない、そもそも聞きたくない蘊蓄を語ること。ゆえに蘊蓄は無駄に蓄積され、忘れられるか、ジジイとともに灰になる。聞き上手のジジイになるために、蘊蓄はほぼ無駄である、と断言して差し支えない。

この本を要するに、お二人とも京都とパリという、お高くとまった街が大嫌いというのが伝わってくる。

もうひとつ。ドイツ軍がパリを占領するたびに、将官がパリの娼館にいりびたったという。娼館の売上を通じて、フランス全体として賠償金をほぼ回収したという。見方を変えれば、ドイツ軍はパリの娼館に行きたいのでフランスを攻めるのではないかと思えるくらい。

いまウクライナとロシアがあれこれやっているけれど、両者はフランスとドイツくらいの違いもない。はたから見たらだいぶ違うフランスとドイツですら、両者の喧嘩はけっきょくパリの風俗をハブに展開していた。そしてロシアとウクライナは京都でいわば、洛外と洛中の喧嘩みたいなもの。そんなん核戦争になるわけないし、ウクライナがとんでもなく縮んでしまったオバケみたいな内陸国になり、そして西欧はインフレでボロボロ。そんなんはじめから決まっていたと思うのだが。ユダヤ人を虐殺さえしなければ、パリのフーゾクめざしてタイガー戦車で突撃したドイツはのちのち愛される存在になれたかもしれない。

1933年、スタヴィスキーというユダヤ系ウクライナ人が、当時の政権がからんだ大がかりな金融犯罪事件がおこったらしい。これも本書の受け売りだが、ゼレンスキーもユダヤ系。ウクライナという場所はなんだか、自分とこのユダヤ人にひっくり返される運命にあるんじゃないだろうか。

2022年8月27日土曜日

それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子 新潮文庫

 読みはじめて知ったのだが、日本学術会議で任命拒否をくらったのがこの人。安倍ぴょんの爺さんとか昭和天皇の大間違いをこんなけまじめに検証したら、そりゃ自民党なら拒否するでしょうよ。統一教会支配下であったにせよ、ポスト統一教会時代にせよ。

449ページに紹介された水野廣徳という人の意見:島国ゆえ他国から容易に侵略されることがなく、しかし天然資源に乏しい「日本は戦争をする資格がない」・・・これはいまでも、いや今であるがゆえに真理である。

いじめてはいけないやつがいる。食糧をつくり、エネルギーを掘り出し、材木を切り出し、窒素を合成し、タングステンなど工業原材料を供給するやつだ。ロシアだ。資源を持っていて、せっせと汲み出し、切り出し、掘り出すやつをいじめてはいけない。

アメリカのいつかの大統領だか国務長官がロシアのことを、「ガソリンスタンドに軍隊がくっついている国家」と言ったらしいが、そのガソリンスタンドの地下には膨大な天然資源があり、軍隊の背後には超音速ミサイルを作ることができる工場が並んでいる。

悪玉アメリカも似たようなものだが、軍隊の経費はすべて借金だ。借金のドル建て証書が世界中で流通しているのはとても不思議な現象だが。そのへんのカラクリはマイケル・ハドソン先生が喝破してくれた。

閑話休題。世界情勢や歴史に対する無知無理解から一方的にロシアを悪者にするなら、単なるアホちんだ。しかしウクライナみたいな腐敗ヤクザ国家を支援するというのは、これはもう確信犯でしかない。そしてウクライナが、ロシア系住民が多いところを全部ロシアに取られ、西のほうはポーランドやチェコに侵食されてとてもとても小さくなり、キエフと周辺くらいしか残されず、ほとんどエストニアくらいの面積で、内陸の不利な立地でロクな産業がなく、しかしアメリカと西欧に対する膨大な借金は残される。そういう事態に至っても、誰も責任を取らないのだろう。安倍ぴょんの爺さんがまさに責任を逃れたように。

この本をよく読むと、東京大阪が焦土にされ、沖縄で20万人が殺され、広島長崎で30万人が殺されるまでに、何度かケツをまくって「もうやめた」と言えるタイミングがあったことがわかる。任命拒否を喰らうくらいで済んでいるのが、まだマシな国家体制ということなのか。

この姉妹ブログ「ワシが舞い降りたった」にリンクを貼っておいたのだが、

https://sputniknews.jp/20220826/12638283.html

もし日本が中国+北朝鮮と戦うならミサイル2万発が必要だ、というのが素人にも分かりやすくシンプルに書かれている。どう考えてもやはり、

「日本は戦争をする資格がない。」



2022年8月26日金曜日

スコット・ホートンのインタビュー:マシュー・エイキン

https://scotthorton.org/interviews/8-12-22-matthieu-aikins-on-the-many-problems-facing-afghanistan-today/

The Naked Don’t Fear the Water: A Journey Through the Refugee Underground

という本を出したジャーナリストのマシュー・エイキンがゲスト。

「裸人は水を恐れず」というタイトルは、アフガニスタンのダリー語(=ペルア語)の俚諺で、失うものは何もないというくらいの意味だそうな。

この人の友人にアフガン人の通訳がいて、彼はアメリカ軍でも働いていた。アメリカ軍が撤退するというので難民ビザを申請したが、受理されなかった。仕方がないので、非合法で出国するという。その友人について、業者の手引きでアフガニスタン南西部からパキスタンのバロチスタンに抜け、パキスタンからイランのバロチスタンに入り、イランを東西に横断し、トルコに入り、トルコからゴムボートでギリシアに入った。そこからさらに西に移動し、あるものはロンドンに至るものもいるというルートである。

「僕がダリー語を話したらアフガン人にしか見えないんだよね」という彼は、実際に写真を見るとその通り。アフガン人にしか見えない。

というわけで、近年稀に見るほんまもんのジャーナリストである。本を入手したいのだが、やっぱりアマゾンでもう一回アカウント開設しなきゃいかんかなあ・・・。