赤瀬川原平さんが2014年10月26日に亡くなっていたことを知った。
なんでこんな大事なことを知らなかったんだろう。それは、パキスタンのイスラマバードから帰国して、つぎの任地であるイランのテヘランに出発する準備で、あたふたしていた時期だったからだ。そうに違いない。
赤瀬川原平さんは1999年ごろ、たてつづけに重要作品を出した。「老人力」も「ライカ同盟」もそう。しかるに我輩は、1999年から2002年までマレーシアのクアラルンプールにいた。「老人力」を読んだのは2007年ごろ、「ライカ同盟」を読んだのは2020年ごろのことだ。「ライカ同盟」を読んだ頃は、まだ原平さんが死んだことを知らなかった。
この「優柔不断術」も1999年。この本は長和町の道の駅の古書コーナーで発見・購入。「老人力」「ライカ同盟」の軽いノリで読みはじめた。はじめは内容も軽いノリだったのに、読み進めるうちにどんどん深くなってきた。後半にはいると、メモしておきたいような重要な表現が出てくる。
「裏側が描けてない」
「言葉はあいまいが真実である」
「芸術方面の人は、だいたい子供的である。その証拠に、すぐ哲学になる。」
赤瀬川原平さんは、考えに考えぬいて、その結果をわかりやすい形で提示する。まるで「ぽてん。」と路上に置くみたいに。それがたいへんおもしろく見える。トマソンだ。彼が切り取ったり、提示したりするものは、あんまり面白いので吹き出してしまうこともある。でもそれは、さんざんデッサンをしたのに「裏側が描けてない」と言われたりして、さんざん蓄積された見る目が生み出すおもしろさだと思う。
原平さんは1937年の生まれなので、この本が出された1999年には62歳だったはずだ。我輩はそんな歳を過ぎたが、原平さんみたいに面白いことを、さりげなく路上に置き去りにできるかな。
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