2021年4月4日日曜日

アジア新聞屋台村 高野秀行 集英社文庫

2021年2月5日

とてもおもしろい。角田光代さんが巻末で秀逸な解説を書いていて、そこにこの本のおもしろさがうまく描写されている。

我が輩がとくに面白いと思い、何度か読み返したのは、魅力的だけど地雷原の朴さんというコリアン女性とのつきあいのところ。お互いがもりあがったときの、主人公による肩透かしの喰らわせかた。

「私は今、彼女に何か言わなければいけないと直感的に感じていた。

 とまどいながらも、彼女のほうに手を差し伸ばした。しかし、もつれる舌が発したのはまたしてもこんな情けない言葉だった。

『あ、それ捨ててくるよ。』

 私はビールの空き缶を受け取ると、自分のとあわせてゴミ箱へ捨てに行こうとした。

 朴さんが私にしてもらいたかったのは、こんなことじゃないはずなのだ。どうして、こんなことになるのだ。

 そう思った瞬間、後ろから細くて白い腕が伸び、私は抱きしめられた。」

「振り返って彼女を抱きしめなければ。少なくとも、彼女の細い手を握ってあげなければ。

 しかし、あいにく私の両手はビールの空き缶でふさがっていた。」

高野秀行は練達の肩透かせ師、プロ中のプロであると思う。

新疆ウイグル自治区のウイグル人のおっちゃん

 2021年2月4日

トルコ人の写真家が新疆ウイグル自治区の高昌を訪れてウイグル人のおとっつあんと会話している。トルコ語とウイグル語、お互いの言葉で話していて半分がた通じている。この感覚は島国に住んでいる我々にはなかなか理解できない。我々もチュルク語世界のいちばん端っこに位置しているはずなのだが。

Uygur Türkü İle Türkçe Konuşmak - Çin'in Sincan Uygur Özerk Bölgesi - 1

Serinin 2. videosu için; https://youtu.be/03vSjiyLgK0Serinin 3. videosu için; https://youtu.be/MMGsqycbwIoÇin'in ücra bir köşesinde, doğma büyüme oralı olan ...


遊牧民から見た世界史 杉山正明 日経ビジネス人文庫

2021年1月25日

杉山正明といえば鼻息のあらいおっちゃんという印象だったのが、この本を読んで漢籍とペルシア語とその他あれこれの言語を解読する碩学だと知った。この本(1997年)を読んだらおっちゃんのめざしている方向がほぼわかった気になれる。

個人的に面白いとおもったのは、遊牧民とロシアの戦い方に共通点を見出していること。すなわち戦うふりをしつつ退却しつつ、自分のフィールドに敵を引き込んで敵の補給線が延びきったところで叩く(ロシアのばあい冬が来て敵が自滅)というところ、それと黄巣や朱全忠を産んだ中国の塩の専売課税制度が元代になってラディカライズされ、のちの秘密結社=中華マフィアになったというところ。そして世界を植民地化した西欧はその特色としてなによりも軍事国家であるであるというところ。

おもしろくて知的興奮を誘う読書だった。


Chucho Valdés ‎– Canciones Inéditas

2021年1月24日

いままでどっちかというとオヤジさんのベボ・バルデスのほうがいいと思っていた。なんでかというと、息子のほうは早弾きテクニックひけらかし臭があって、だいいち1/48音符(たぶん)の連続なんて何がなんだかわからない。

ところがこの「未発表曲集」と題された2004年のアルバムは、それがなくて聴きやすい。聴きやすいだけでなく、キューバ音楽の良さがしみじみと堪能できる。尼で配送費込みでなんと350円。

蛇足:

2013年のソロ Chucho Valdés - Cancionero Cubano

https://www.youtube.com/watch?v=3z_9FU6T8b4

もなかなかいいのだけれど、早弾きがあちこちにはいっている。自作の曲にそれが顕著なので、かならずしも早弾きひけらかしから改宗したわけでもなさそうだ。

坂本スミ子と米おっさん

2021年1月24日

坂本スミ子 1936年-2021年1月23日 享年84歳

このところ訃報ばっかりや。坂本スミ子の訃報を見てヨネおっさんのことを思い出した。

ヨネおっさんというのは亡父の妹だが、1960年代のなかごろまで梅田のアローというマンモスキャバレーの電話交換手として働いていた。そこでいっしょに働いていたのが「スミちゃん」だった。おそらくスミちゃんは電話交換手ではなくて歌手だったのだろう。

「スミちゃんがあんな有名になるなんてなぁ。」と話していた。

ヨネおっさんはスミちゃんより10歳上で、数年前に死んだ。言葉遣いが男みたいで、「われー」とか「やんけー」とか平気で言うので、幼少のころの我が輩が「ヨネおっさん」と呼んだ。それから一族こぞってその呼び名が定着した。本人はみんなからヨネおっさんと呼ばれることに抵抗を感じたのだろうか。

女の子は女らしくという当時の考えかたと、自分のセクシャリティーの間で悩んだのかもしれない。

中村則弘先輩の早すぎる死を悼む

2021年1月21日

春節が近くなると、我が輩の脳内で「北風吹」が鳴る。

大学1年生のとき、中国語劇で白毛女をやったのは神戸外大だったか、それとも大阪外大だったか。劇場の椅子に座ろうとしたときに北風吹が流れ、鳥肌がたったことを昨日のように思い出す。

その白毛女のストーリーを熱く語ったのが中村先輩だった。

熱く語る先生をもった学生はきっと幸せにちがいない・・・などと考えながら帰宅した夕刻の訃報。

長崎大学 多文化社会学部教授 福井県出身 享年63歳

https://www.youtube.com/watch?v=wnKwzJAtiYk

Ara Dinkjian - the Long Goodbye

2020年12月27日

チャンドラーの小説ではない。音楽である。

https://www.youtube.com/watch?v=_Cda5l_cFAE

10代のはじめから洋楽を聴きはじめてかれこれ50年。それくらい聞いていると、スカートの丈じゃないけれど、どんな音楽を聞いてもどこかで聞いたような・・・という飽きが感じられる。

それもあってちかごろ特にトルコの、広い意味でのアラブ音楽を集中的に聞いている。それでみつけたのがこの名前なのだが、この人の音楽を聞いていると西洋音楽とオリエントの境界を感じさせない。

あちこちでArmenian in Americaという組曲をライブでやっているので、名前からしてもアルメニア系なのだろう。 The secret trio にも参加している超絶技巧の作曲家。