2022年1月10日月曜日

シャンペン・スパイ ウォルフガング・ロッツ ハヤカワ文庫

 007ではなく、じっさいのスパイ活動に興味のある人なら読んでおいて損はない。

我が輩は同じ著者の「スパイのためのハンドブック」を先に読んだのだが、シャンペン・スパイを先に読んでからハンドブックを読んだほうがより楽しめると思う。

我が輩はスパイに興味があるといっても、佐藤優はほとんど読まない。というのは第1に、在外公館の外務省の職員とか防衛省の武官は合法的に情報を集めているだけであってスパイではない。第2に、「ヒューミントがどうのこうの」とか一般にあまり馴染みがない(けどたいして深い意味がない)業界ジャーゴンをちょっとづつ出しながら「わしら玄人は」みたいなスタイルなのが楽しくない。第3に、在外公館の外務省職員は自分たちはスパイではないにせよ、スパイの標的とされてきたのはそのとおりで、その立場を自覚していながら、人生の決定的な局面でつねに判断を間違えてきた人に指南っぽいことを語られたくない。

ちなみに我が輩が佐藤優を読まないのは、彼がイスラエルびいきだからではない。佐藤優がイスラエルびいきなのは、ジョージ・ブッシュとおなじく神学の帰結するところがイスラエルということになるだけのはなしだ。神学徒は別にして、イスラエルという国を好きな人は多くないと思うし、イランを敵視しているのも純粋に国内政治の問題でまったく困ったもんだと思うし、核不拡散協定に加盟せずに核弾頭を200発も300発も持っていて、それ自体も問題なのだけれどそれを問題視しないアメリカはじめ国際社会の方がどうかしていると思う。パレスチナで暮らしていた気の知れた友人家族が、他のどんな辺境でも任地を嫌いにならかなったのに、イスラエルだけは好きになれなかった、と言っていたものだが、しかしそれらすべてを知っていたとして、何千年も欧州のあちこちで迫害され、人為的に根絶させられそうになった人たちとして、諜報機関モサドを国民が愛しているというのはわかる気がする。

だから主人公が牢獄から解放されてイスラエルでのんびり暮らしましたというエンディングには、なんとなくホッとするものを感じる。



0 件のコメント:

コメントを投稿