2022年1月10日月曜日

モンゴルを知るための65章 金岡秀郎 明石書店

 「〜を知るためのn章」シリーズは、(出はじめのころではなく昨今の)地球の歩き方みたいに無責任ではなく、学術的なことも書いてあるので、値段は高いけれど買って読みたいと思う。たいてい複数の著者、場合によっては章ごとに異なる著者が担当していて、いろんな観点からその国のことを知ることができる。

しかし「モンゴルを知るための」の場合、金岡さんという我が輩と同年生まれの著者ひとりがぜんぶ買いているので、例外的といっていいかもしれない。そのせいか、通読すると金岡さんの癖というか傾向が滲みでていて、この人は左翼が徹底的に嫌いなんだなと思う。そのせいか小渕さんはじめ自民党外交びいきのようで、いやいや右であれ左であれ、日本であれモンゴルであれ功罪はそれぞれあるでしょ、と言いたくなる。

我が輩はまず言語の章から読みはじめ、もうちょっと深く書いてほしいな、というあたりで別の話題に流れてしまう。ま、専門書じゃないのでこれ以上深掘りしたところで一般の読者がドン引きするだけだろう。我が輩が師と仰ぐ長田夏樹先生(東京外大モンゴル語OBなので金岡さんと同門)の講義なんて受講者全員がドン引きしていたのだから。

つぎに歴史。第1に明が元にとってかわってからのモンゴル帝国がどうなったのか、第2に木村肥佐生さんが描写する徳王とはいったい何者だったのか、第3に草原のモンゴルがなんで社会主義共和国になったのか、第4にそこでなにがどうなっていたのか、以上のことをぜんぜん知らなかった我が輩である。そこで歴史のところをぜんぶ読んだのだが、やっぱりよくわからない。もういっかい読まないといけないな。

著者がモンゴル好きというのはよくわかるのだが、「遊牧民から見た世界史」の杉山正明さんみたいなスカッとした読後感はない。いろんなことをいっぱい書いてあって、その意味で拡散していて、著者の専門が何なのかよくわからない。仏教用語に独自のふりがながふってあって、チベット仏教とか密教系の人なのかなという感じもする。それにもかかわらず、この本にとってかわるモンゴル入門書はないので、貴重な労作だと思う。


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