2022年1月30日日曜日

毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で 沖田X華

 拙宅をご来訪になった清水閣下にちょっと見せたら、「この本なら30分で読んじゃうんじゃない?」と言われた。じっさいには1時間以上かけてまだ読みきれていなかった。筆者の実体験を描いているので、ストーリーの背景を構成する情報量が多く、そのせいかじっくり読まされてしまう。

なによりも、筆者のひたむきな生きざまに胸を突かれる。

2022年1月10日月曜日

モンゴルを知るための65章 金岡秀郎 明石書店

 「〜を知るためのn章」シリーズは、(出はじめのころではなく昨今の)地球の歩き方みたいに無責任ではなく、学術的なことも書いてあるので、値段は高いけれど買って読みたいと思う。たいてい複数の著者、場合によっては章ごとに異なる著者が担当していて、いろんな観点からその国のことを知ることができる。

しかし「モンゴルを知るための」の場合、金岡さんという我が輩と同年生まれの著者ひとりがぜんぶ買いているので、例外的といっていいかもしれない。そのせいか、通読すると金岡さんの癖というか傾向が滲みでていて、この人は左翼が徹底的に嫌いなんだなと思う。そのせいか小渕さんはじめ自民党外交びいきのようで、いやいや右であれ左であれ、日本であれモンゴルであれ功罪はそれぞれあるでしょ、と言いたくなる。

我が輩はまず言語の章から読みはじめ、もうちょっと深く書いてほしいな、というあたりで別の話題に流れてしまう。ま、専門書じゃないのでこれ以上深掘りしたところで一般の読者がドン引きするだけだろう。我が輩が師と仰ぐ長田夏樹先生(東京外大モンゴル語OBなので金岡さんと同門)の講義なんて受講者全員がドン引きしていたのだから。

つぎに歴史。第1に明が元にとってかわってからのモンゴル帝国がどうなったのか、第2に木村肥佐生さんが描写する徳王とはいったい何者だったのか、第3に草原のモンゴルがなんで社会主義共和国になったのか、第4にそこでなにがどうなっていたのか、以上のことをぜんぜん知らなかった我が輩である。そこで歴史のところをぜんぶ読んだのだが、やっぱりよくわからない。もういっかい読まないといけないな。

著者がモンゴル好きというのはよくわかるのだが、「遊牧民から見た世界史」の杉山正明さんみたいなスカッとした読後感はない。いろんなことをいっぱい書いてあって、その意味で拡散していて、著者の専門が何なのかよくわからない。仏教用語に独自のふりがながふってあって、チベット仏教とか密教系の人なのかなという感じもする。それにもかかわらず、この本にとってかわるモンゴル入門書はないので、貴重な労作だと思う。


シャンペン・スパイ ウォルフガング・ロッツ ハヤカワ文庫

 007ではなく、じっさいのスパイ活動に興味のある人なら読んでおいて損はない。

我が輩は同じ著者の「スパイのためのハンドブック」を先に読んだのだが、シャンペン・スパイを先に読んでからハンドブックを読んだほうがより楽しめると思う。

我が輩はスパイに興味があるといっても、佐藤優はほとんど読まない。というのは第1に、在外公館の外務省の職員とか防衛省の武官は合法的に情報を集めているだけであってスパイではない。第2に、「ヒューミントがどうのこうの」とか一般にあまり馴染みがない(けどたいして深い意味がない)業界ジャーゴンをちょっとづつ出しながら「わしら玄人は」みたいなスタイルなのが楽しくない。第3に、在外公館の外務省職員は自分たちはスパイではないにせよ、スパイの標的とされてきたのはそのとおりで、その立場を自覚していながら、人生の決定的な局面でつねに判断を間違えてきた人に指南っぽいことを語られたくない。

ちなみに我が輩が佐藤優を読まないのは、彼がイスラエルびいきだからではない。佐藤優がイスラエルびいきなのは、ジョージ・ブッシュとおなじく神学の帰結するところがイスラエルということになるだけのはなしだ。神学徒は別にして、イスラエルという国を好きな人は多くないと思うし、イランを敵視しているのも純粋に国内政治の問題でまったく困ったもんだと思うし、核不拡散協定に加盟せずに核弾頭を200発も300発も持っていて、それ自体も問題なのだけれどそれを問題視しないアメリカはじめ国際社会の方がどうかしていると思う。パレスチナで暮らしていた気の知れた友人家族が、他のどんな辺境でも任地を嫌いにならかなったのに、イスラエルだけは好きになれなかった、と言っていたものだが、しかしそれらすべてを知っていたとして、何千年も欧州のあちこちで迫害され、人為的に根絶させられそうになった人たちとして、諜報機関モサドを国民が愛しているというのはわかる気がする。

だから主人公が牢獄から解放されてイスラエルでのんびり暮らしましたというエンディングには、なんとなくホッとするものを感じる。



2022年1月4日火曜日

マツダ 心を燃やす逆転の経営

 年末、たーんとある洗濯物を乾かしに出かけ、コインランドリーで乾かす間に読んだ本。めっちゃおもしろいので帰宅して残りを一気読み。隠居して読んでもおもしろいのだから、おそらく現役で生臭いときに読んでも面白いんではなかろうか。

蓋し優秀な経営者というのは、人の観察眼がキモなのではないかと思う。今までの職業人生で出会ったすばらしい人々は、それぞれがもっている技能や経験を隠すことや誇ることなく、それらを披露するのにぜんぜんためらいがなかった。それだけでも人を惹きつける魅力なのだが、それプラスするどい観察眼で適材適所を心得ていたのではないかと思う。