ヤフオクで魯迅選集ほか31冊を1000円ほどで手に入れた。そのほとんどは文学関連の評論とか注釈とか資料集で、本編そのものは少ない。魯迅選集と「魯迅詩浅析」以外はたぶん読むことはなかろう。
ヤフオクで出ているのはこれだけではない。大量の中国関係文書が箱売りされている。「いったい、どんな人が逝去したのか?」という疑問が沸く。
前年秋の同学会で戸崎哲彦先輩の訃報に接した。戸崎(ふーちー)は我輩より4年上だが、彼は大学院修士課程に進んだので、2年間交流があった。中国語のこと、学究を志すということ、本の買いかた、酒の飲み方など、じつにいろいろなことを教えてくれた。
我輩は中国文学に特段の興味があったわけではない。なぜ戸崎先輩が我輩にいろいろ教えてくれたのか、よくわからない。長田夏樹教授が教えていた中国語音韻学の講義を、他の誰も理解できないと言っていたが、我輩だけが面白がっていた。それくらいしか理由が浮かばない。
なんどか彼の下宿に泊めてもらった。彼の下宿にはキャラの濃い先輩たちが何人も住んでいた。その中のひとり、勝原一朗先輩はずいぶん若い頃に逝去した。もうひとりの中村則弘先輩は、のちに長崎大学でずいぶん偉い人になったが、コロナ禍の最初の年に逝去した。
戸崎は故郷の鳥取の大学で研究を続けていたと聞いた。ヤフオクで見つけた中国書籍の発送元は岡山県。どうやら違う。
荷物がついて開梱し、めあての魯迅選集を開くと、書状が一葉はらりと落ちた。一面には英語で、もう一面にはバハサ。マレーシアかインドネシアか。どうやら招待状である。場所はクアラルンプール。宛先はノザキミツアキご夫妻、日付は1961年2月25日。「スランゴール国王の主催による考える日の会」云々とある。ノザキ氏は外交官か、もしくは研究者であろうか。研究者で学会なら夫妻で招待されないだろうから、やはり外交官か。
外交官で魯迅選集はじめコアな中国語書籍類をご所有となれば、中国語業界の関係者に違いない。おそらく、ずいぶんご高齢で逝去されたのか。岡山という立地であれば、ひょっとして同学の大先輩かもしれない。
そんなことを考えながら、魯迅選集の上巻を開いてびっくり。発行者が「北京西総胡同甲50号」の開明書店、初版が1952年4月、主編が「茅盾」とな。
茅盾というのは、中国近代史上の人物である。
これは博物館にあるべき書籍かもしれない。こんど同学会に持っていって、見せびらかしてやろう。