2023年5月27日土曜日

魯迅選集

ヤフオクで魯迅選集ほか31冊を1000円ほどで手に入れた。そのほとんどは文学関連の評論とか注釈とか資料集で、本編そのものは少ない。魯迅選集と「魯迅詩浅析」以外はたぶん読むことはなかろう。

ヤフオクで出ているのはこれだけではない。大量の中国関係文書が箱売りされている。「いったい、どんな人が逝去したのか?」という疑問が沸く。

前年秋の同学会で戸崎哲彦先輩の訃報に接した。戸崎(ふーちー)は我輩より4年上だが、彼は大学院修士課程に進んだので、2年間交流があった。中国語のこと、学究を志すということ、本の買いかた、酒の飲み方など、じつにいろいろなことを教えてくれた。

我輩は中国文学に特段の興味があったわけではない。なぜ戸崎先輩が我輩にいろいろ教えてくれたのか、よくわからない。長田夏樹教授が教えていた中国語音韻学の講義を、他の誰も理解できないと言っていたが、我輩だけが面白がっていた。それくらいしか理由が浮かばない。

なんどか彼の下宿に泊めてもらった。彼の下宿にはキャラの濃い先輩たちが何人も住んでいた。その中のひとり、勝原一朗先輩はずいぶん若い頃に逝去した。もうひとりの中村則弘先輩は、のちに長崎大学でずいぶん偉い人になったが、コロナ禍の最初の年に逝去した。

戸崎は故郷の鳥取の大学で研究を続けていたと聞いた。ヤフオクで見つけた中国書籍の発送元は岡山県。どうやら違う。

荷物がついて開梱し、めあての魯迅選集を開くと、書状が一葉はらりと落ちた。一面には英語で、もう一面にはバハサ。マレーシアかインドネシアか。どうやら招待状である。場所はクアラルンプール。宛先はノザキミツアキご夫妻、日付は1961年2月25日。「スランゴール国王の主催による考える日の会」云々とある。ノザキ氏は外交官か、もしくは研究者であろうか。研究者で学会なら夫妻で招待されないだろうから、やはり外交官か。

外交官で魯迅選集はじめコアな中国語書籍類をご所有となれば、中国語業界の関係者に違いない。おそらく、ずいぶんご高齢で逝去されたのか。岡山という立地であれば、ひょっとして同学の大先輩かもしれない。

そんなことを考えながら、魯迅選集の上巻を開いてびっくり。発行者が「北京西総胡同甲50号」の開明書店、初版が1952年4月、主編が「茅盾」とな。

茅盾というのは、中国近代史上の人物である。

これは博物館にあるべき書籍かもしれない。こんど同学会に持っていって、見せびらかしてやろう。






2023年5月16日火曜日

コントラバス

 本ではない。楽器である。トルコ語も朝鮮語もロシア語もやりたいと願っているくせに、コントラバスも買った。

言い訳だが、トルコ語は本を買ってから1年で半分まで来た。朝の電車の30分、週5日だけの緩慢な歩みである。だからコントラバスも、夜更けの30分くらい触っていたら、なんとかなるんじゃないかと思う。


じつはエレキベースならあったんだ。アリアのヴィンテージを入手して、フレットを抜いて溝を埋め、サンドペーパーでつるつるにしてフレットレスにした。なかなかいい楽器に仕上がった。アンプを繋がずに弾いても味がある。しかし音圧がない。アンプに繋ぐと、ノイズがのったりあれこれめんどうだ。だからリサイクルショップに売ってしまった。

やっぱり音圧ならアコースティック。4/4サイズだからこれ以上の大きさは望めない。安定のスズキブランドやし。スクールモデルみたいなので、そんな高級じゃないけれど、人前で弾くわけでもない。自分が独り悦に入っていればいい。

自分の頭のなかで鳴っている音を表現するのに、これ以上の楽器はないと思う。

ニューエクスプレスプラス ロシア語

こないだ「清里のマリヤ」で茶をしばいたときのこと。月子が店主夫妻とロシア語で楽しそうに話しているのを眺めていて、ロシア語ができたら楽しそうだなと思った。

いまはまだトルコ語を、おなじエクスプレスシリーズの教科書で勉強している最中で、ようやく10課にきたばかり。半分である。本を買ってからここまで来るのに1年かかった。ともかく、トルコ語の本を一冊終えなければならぬ。

それからロシア語に行くかというと、じつは朝鮮・韓国語が待っている。トルコ語をやっているうちに、配列がほぼ同じ朝鮮語をやりたくなった。配列という点では、日本語もほぼ同じだ。しかしトルコ語を勉強すると、自分らの使っている言語を外国語みたいな目で眺めることになる。配列がほぼ一緒やから。トルコ語がこうなら、朝鮮語はどうかな?と知りたくなった。

さいわいハングルはずいぶん昔から読めるので、いきなり始めることができる・・・。じつはトルコ語も舐めてかかってさんざん苦労したのだが。

ロシア語はいつのことになるかわからない。月子が辞書をくれた。彼女はデジタル版を持っているから、紙の本をくれたというわけ。これを机において、しばらく眺めることにしよう。とりあえず。



ぐるぐる博物館 三浦しをん

連休で月子とはなこが出入りした部屋にあった。読みはじめて、あんまりおもしろいので一気読み。「人間って面白い」とオビに書いてあるが、三浦しをんの変態さがいちばん面白い。



2023年5月3日水曜日

スペインのユダヤ人 関哲之 山川出版社

トレドの翻訳機関での翻訳のやりかた:ユダヤ人やコンベルソ(キリスト教に改宗したユダヤ人)がアラビア語の原典を口頭でローカルのスペイン語に訳す。それを聞いてスペイン人がラテン語で筆記する。

そんな詳細や蘊蓄や情報がてんこ盛り。分厚い本ではぜんぜんないけれど、情報量が多い。スペインの歴史が、ユダヤ人とのインタラクションそのものだったことがわかる。ユダヤ人はマイノリティーとして単なるトッピングだったのではない。スペイン人とユダヤ人は麺とつゆのように絡みながら歴史を作ってきた。ユダヤ人がなければスペインはただの麺。味も何もない。しかしそれはスペインだけではなく、ベルギーも、オランダも、イギリスも、ポルトガルも、そしてブラジル経由でユダヤ人を受け入れたニューヨークもそうだった。

ユダヤ人の情報・貿易ネットワークがなければ、ヨーロッパもアメリカもただの麺だったに違いない。


異体字の世界 小池和夫 河出文庫

筆者は活字・写植の文字校正者。ほんまマニアックな世界。老眼ゆえか、いや老眼でなくとも目を凝らさないとわからない点の有無など散りばめてあって、この本の活字写植の人もさぞかし大変だったに違いない。ベッドサイドにおいて寝る前に読むと、速攻で睡眠に入ることができる。