2025年9月23日火曜日

波多野澄雄 国家と歴史 中公新書

ひとことで言えば、この本は「屁」である。人の屁ではなく、犬の屁である。著者は官の世界で長く働いた人らしい。日本人は二枚舌・三枚舌が下手だと思っていたが、この本を読んで、日本人にも、特に官の世界で、二枚舌の上手な使い手がいることがわかった。例えば、大東亜戦争を他国が侵略戦争であると規定することは受け入れるが、日本国家はそれを侵略戦争と認めない、という。朝鮮半島を併合して、国籍のみならず言語や文化を奪ったことが侵略戦争でないと言うのか?本著が犬の屁であるのは、昭和天皇の戦争責任と、明治以来国営宗教であった神道、就中靖国神社に対する評価を完全にスルーしているからである。この2点をスルーして、日本の戦後処理を語ることはできない。この著者は、その責に全く不適格である。ウクライナが戦争に負けて、戦後処理はどうなるのか、考えるネタとして読んだ本著だが、「犬の屁」であった。残念だ。